スパコン富岳で迫る新薬開発手順2 新冷戦(85)

スパコン富岳で迫る新薬開発手順2
          新冷戦(85)



1からの続きです

前ページでは新型コロナ治療薬の研究開発
に世界一のスパコンになった富岳が使われ
ていることをお知らせしました。富岳の開
発費は1300億円かかり、15万個のCPUが
使われているということです。新型コロナ
ウイルスが増殖するときに必要とする酵素
の「メインプロテアーゼ」を標的にして、
既存薬2,128種の分子シミュレーションを
富岳にしてもらったということでした。


我等が富岳の威力は、先代のスパコン「京」
では薬剤が結合したところから計算してい
たが、富岳ではどのように結合するかを計
算してくれる。高精度で多くの化合物の結
合が評価できるようになり、実験する手間
が劇的に減ったということです。「GROM
ACS」というアプリケーションを使ったと
いうことです。これはオランダのグローニ
ンゲン大学が作ったアプリケーションとい
うことです。Groningen Machine for 
Chemical Simulatioun、グローニンゲン・
マシン・フォー・ケミカル・シミュレーシ
ョンズの頭文字です。世界中の大学で使わ
れているということです。日本語にすると
分子動力学計算シミュレーションとなるよ
うです。


分子動力学というのは、タンパク質を作っ
ている原子はいつも少しづつ動いているの
ですが、この動きを計算すると思ってくだ
さい。原子に働く力は、化学結合の力、静
電気の力、分子間の力などがあり、これの
合計を計算して、原子がどのように動くか
をニュートンの運動方程式で計算するとい
うことです。そして何万個とある原子すべ
てについてこの計算をするということです。
頭が痛くなるようなお話になりましたが、
ご心配なく、計算するのはアプリケーショ
ンの「GROMACS」がスパコンの富岳君へ
指示するのでしょう。従って、読者が気に
することは何もありません。動きが出てく
るとシミュレーションができます。


薬を作るのに重要なのは、目標のタンパク
質に結合する薬剤を探すことということで
す。タンパク質の活性ポケットにどの薬剤
がはまるかなのですが、2000種も薬剤が
あると考えると、人間はそれだけで絶望す
るのではないでしょうか。しかし、薬剤の
濃度を数百倍に上げるなどの調整をすると、
スパコン富岳は数十種類の薬剤を選択した
ということです。選択の上位にニクロサミ
ド、ニタゾキサニドという薬剤が上位に現
れたということです。世界で今臨床試験が
行われているのはこの2つを含む12種類の
薬剤ということです。


ニクロサミドはサナダムシ駆除の薬なので
すが、日本の製薬会社の薬剤です。このよ
うに富岳が上位に選定し、奥野教授は可能
性がありそうと判断できる場合は、製薬会
社へ情報を提供し、できれば臨床試験をし
てみたらと提案するようです。こういうの
がいくつも出てきたようです。たった10日
間ですごい結果ですね。類似の酵素タンパ
ク質を順に標的にして2000種以上の薬剤
を当てていくとこれだけでも計り知れない
ことになりそうです。スパコン富岳が活性
ポケットにはまりそうな日本製の薬剤をい
くつも選別し、奥野教授は富岳は日本の製
薬業界を活発にできると考えているようで
す。読者の方々はこれでスパコン富岳を覗
いたような気分になれたでしょうか。



竜巻・ネブラスカ州2014年6月の16

貿易戦争5月27・竜巻・ネブラスカ州2014年6月16日の16.PNG

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スパコン「富岳」、わずか10日で2,000種類超の新型コロ治療薬候補を選別

配信



1からの続きです

■数日で数千種類の薬を評価

 理化学研究所 計算科学研究センターの松岡聡センター長は、「世界一となった富岳が、早くもさまざまなかたちで研究成果をあげており、喜ばしいことである。新型コロナウイルスの感染者が増加するなかで、感染拡大の予防策の1つとして、創薬に役立つという点で有効な成果が出た。

 いままでの常識では、創薬は約10年の時間がかかり、コンピュータの役割は候補薬をフィルタリングすることに、~2年をかけて貢献していた。だが、新型コロナウイルスは即応性が必要であり、それに対して成果をあげることができた。創薬研究の方法論としては画期的なものである」とコメントした。

 奥野教授は、「これまでスーパーコンビュータでは、分子を動かす計算はできない。また、京では、薬剤が結合したところから計算し、生体に近いかたちで、シミュレーションができ、正確な結合の強さを見積もることは可能な点は画期的であったが、その前段階となるタンパク質がどのように結合するかを計算することは難しかった。

 創薬にとって重要なのは、タンパク質に結合(作用)するかどうかがわからないため、結合する薬剤を探すことが難しい点である。薬剤が離れている状態から、活性ポケットにはまり込むことを評価しなければ、どの薬剤が結合するかを探すことができない。

京では、離れたところからの計算を行なった場合には、十数個ぐらいの計算はできるが、数千種類の化合物は対象にできなかった。京で約2,000種類の評価をするには、1年以上かかっていただろう。

 薬剤開発では、たくさんの化合物の候補のなかから結合するものを探さなくてはならないというハードルがある。富岳によって、高精度で多くの化合物の結合が評価できるようになり、実験する手間が劇的に削減できる。

今回は、6分の1となる72台のリソースを活用。これを一気に使ったわけでなく、時間配分に基づいて使用した。この成果によって、創薬の現場でも、富岳がより汎用的に使われることができることを示した」とした。

 今回の分子動力学計算によるシミュレーションでは、アプリケーションには、「GROMACS」を使用。シミュレーション上では、薬剤の濃度を通常の数百倍に高めることで、薬剤とタンパク質の衝突頻度をあげ、短い時間で結合過程を捉えることができたという。

 「薬剤の結合時間を十分に観測するには、最低1msは計算をしたい。だが、富岳でも1msの計算を千種類以上で計算するのは現実的ではない。そこで、薬剤の濃度を高めてシミュレーションを行なうというように、アプリケーション側で工夫した。薬剤がタンバク質の活性ポケットにはまり込み、安定して結合することを短期間に評価できた」という。

結合シュミレーション
貿易戦争5月26・富岳2の2・結合シュミレーション.PNG
 メインプロテアーゼとニクロサミドの結合シミュケーション。黄部分が活性ポケット。赤いものが薬剤

奥野教授によると、富岳向けにチューニングした分子動力学計算アプリとして、GENESISを用意しているが、このアプリでは、高濃度計算機能が現在開発中であり、そこで今回は、富岳での利用を考えていなかったGROMACSを使い、高濃度計算をしたという。

 「GROMACSは、富岳用にはチューニングをしていない。だが、GENESISをチューニングした実績をもとにすれば、GROMACSもチューニングによって、5~10倍速くなることを見積もっている。今回は約2,000種類の評価に10日間かかったが、これが2日間で終わるようになる」とした。

 GROMACSは京でも利用されていた経緯があるアプリケーションであり、今後、富岳向けのチューニングを進める一方で、富岳と接続するクラウドサービスとの連携によって、GROMACSを活用できるようにする考えを示した。

 2,128種類の既存医薬品を、タンバク質の活性ポケットに結合する強さと、タンパク質全体に結合する強さをスコア化したところ、数10種類の薬剤を選択できたという。

 「大半の薬剤は結合しないが、評価できたなかで、上位30種類程度の薬剤が重要であると考えている。タンパク質の活性ポケットに結合する強さでトップ100位以内のものと、タンパク質全体への結合の強さでトップ100位以内としたもののうち、世界で新型コロナウイルス向けとして臨床研究や治験が行なわれている薬剤は、ニクロサミド、ニタゾキサニドなど、12種類である。


貿易戦争5月26・富岳3・スクリーニング.PNG

 スコアの上位にあるものが、海外では、臨床試験や治験が行なわれており、薬剤スクリーニングの結果とそれがリンクしていることが見えてきた。富岳の計算結果が正しいことを示すものである。

 ニクロサミドは、一度はまり込むと薬剤がなかなか外れないこともわかった。筋のいい薬剤である。これは世界的に解析されていないものであったが、それを示すことができた」などとしている。

 なお、ニクロサミドは、寄生虫(サナダ虫)を駆除する薬剤であり、妊婦でも服用可能で、安価なのが特徴。だが、国内承認はとられていない。また、ニタゾキサニドはC型肝炎ウイルスの治療薬としても検討された経緯があり、MERS(中東呼吸器症候群)の際にも候補になった薬剤だという。

 「ニクロサミド、ニタゾキサニドは、論文を読むかぎり、いずれもマイルドな薬効と見られており、新型コロナウイルスが過剰に増殖する前での服用や、濃厚接触により2週間の経過観測の際に予防的に服用するといった用途が検討されそうだ。

 また、レミデシビルなどの抗ウイルス薬との併用で薬効を強めることができる可能性もある。さらに、今後実施するメインプロテアーゼ以外のタンパク質にも作用する薬剤を探索するが、その結果とともに、ニクロサミド、ニタゾキサニドと組み合わせた投与も行なっていくことも検討できるだろう」とした。

 なお、奥野教授は、「これらは富岳の計算によって同定されたものであり、日本国内での臨床研究や治験は行なわれていない。この薬剤が、新型コロナウイルスに効果があることを示したものではない。また、勝手に個人輸入すると違法になる」とも述べている。

★ブロンズ像 マリリン・モンロー
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■日本の製薬会社が開発した薬が活性ポケットと強く結合

 その一方で、上位にスコアされた薬剤についても説明した。  活性ポケットの結合の強さでは、ニクロサミドが2番目のスコアであり、それを上回る1位のスコアを出した薬剤の名称は、「名前だけが一人歩きすると、社会的な影響も大きい」として公表しなかったが、「日本の製薬会社がオリジナルで開発し、特許を持っているものである。海外では、臨床研究や論文などが報告されていない。この医薬会社と話しあいを行ない、製品化に向かって進んでいきたい」などとした。

 また、活性ポケットへの結合では3位のスコアだが、全体での結合では2位となり、マッピング上では、一番右上に位置づけられる薬剤については、「比較的古い薬剤であり、特許が切れているものである」と明かした。

 さらに、すでに海外治験が行なわれている薬剤のなかで、ニクロサミド、ニタゾキサニドについで、3位のスコアをつけた薬剤は、「日本でも市販されており、手軽に手に入る薬剤である」としている。

 理研では、今回の結果をもとに、今後は、これらの薬剤のライセンスを持っている企業に情報を開示して、新型コロナウイルスへの適用を提案するという。

 奥野教授は、「国内では治療薬の治験が行なわれていない。日本のメーカーにもがんばってもらいたい。医学研究者とともに、臨床研究、治験も進めたい。理研では細胞実験の検証も行ない、学術的な観点から順次公表していきたい」とした。

 一方で、今回のシミュレーションでは、タンパク全体に対して、結合する薬剤があることを見出したほか、一定の場所に滞在する薬剤も確認しており、「狙った活性ポケットとは別の場所に結合する薬剤については、副作用の可能性もある。今後の研究を通じて、副作用の予測にも応用できるのではないかと考えている」とした。

PC Watch,大河原 克行



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終りまでお読み頂き、ありがとうございました
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